はじめに
前回の記事では、営業所技術者等と配置技術者の違いや、営業所技術者等が一定の要件のもとで主任技術者・監理技術者を兼任できる制度について解説しました。
近年、建設業界では人手不足が深刻化しており、
- 技術者が足りない
- 技術者を確保できず受注を断らざるを得ない
- 複数の現場を抱えたいが技術者不足で対応できない
といった悩みを抱える事業者も少なくありません。
こうした状況を受け、令和6年の法改正では、主任技術者・監理技術者の専任義務について一定の合理化が行われました。
今回は、配置技術者の専任義務の合理化について、その概要と実務上の注意点を解説します。
そもそも「専任」とは?
主任技術者や監理技術者は、一定の工事については専任で配置しなければなりません。
専任とは、その工事現場に継続的に従事し、他の工事現場の職務を兼ねない状態をいいます。
従来は、
- 現場Aの専任主任技術者
- 現場Bの専任主任技術者
を1人の技術者が兼務することは原則として認められていませんでした。
そのため、
「技術者が足りず工事を受注できない」
というケースも少なくありませんでした。
専任が必要になるのはどんな工事?
すべての工事で専任が必要になるわけではありません。
公共性のある施設又は多数の者が利用する施設に関する一定規模以上の重要な工事については、主任技術者または監理技術者を専任で配置する必要があります。
現在は、
- 請負代金4,500万円以上
- 建築一式工事は9,000万円以上
の工事が専任配置の対象です。
専任でも2現場まで兼務できるようになった
令和6年の法改正により、一定の要件を満たす場合には、主任技術者や監理技術者が複数の工事現場を兼務できる制度が創設されました。
これがいわゆる「専任特例1号」です。
簡単にいうと、
本来は1現場に専任しなければならない技術者が、例外的に2現場まで兼務できる制度
です。
営業所技術者等との兼任制度との違い
ここで注意したいのが、前回解説した営業所技術者等との兼任制度とは別の制度だということです。
前回の記事で紹介したのは、
営業所 ⇔ 現場
の兼任です。
例えば、
- 営業所技術者等
- 主任技術者
を同じ人が担当するケースです。
一方、今回解説する専任特例1号は、
現場 ⇔ 現場
の兼任です。
例えば、
- 現場Aの主任技術者
- 現場Bの主任技術者
を同じ人が担当するケースです。
両制度は要件が似ている部分もありますが、制度の趣旨や適用場面は異なります。
専任特例1号の主な要件
専任特例1号を利用するためには、主に次のような要件を満たす必要があります。
① 各工事の請負金額が1億円未満
兼務するそれぞれの工事について、
- 請負代金が1億円未満
- 建築一式工事は2億円未満
であることが必要です。
これを超える大規模工事については、従来どおり専任配置が求められます。
② 兼務できるのは2現場まで
1人の主任技術者または監理技術者が兼務できる現場数は2現場までです。
3現場以上の兼務は認められていません。
③ 現場間の移動時間がおおむね2時間以内
災害や事故などへの対応ができるよう、現場間の移動時間はおおむね2時間以内であることが必要です。
距離ではなく、実際の移動時間で判断されます。
④ 下請次数は3次まで
施工体制が過度に複雑にならないよう、下請次数は3次までとされています。
⑤ ICT等による施工体制が確保されていること
技術者が常時現場にいなくても適切な施工管理が行える体制が必要です。
例えば、
- 情報通信機器の活用
- 遠隔確認体制の整備
- 連絡員の配置
などが求められます。
制度を利用する際の注意点
この制度は、
「人手不足だから自由に掛け持ちしてよい」
という制度ではありません。
専任特例1号を利用するためには、法令で定められた要件を満たし、適切な施工体制を継続して確保する必要があります。
また、工事の途中で要件を満たさなくなった場合には、専任特例を利用できなくなる可能性があります。
制度を利用する際は、適用要件や必要書類を事前に十分確認しておきましょう。
専任特例2号とは?
令和6年の法改正では、「専任特例1号」のほかに「専任特例2号」も設けられています。
専任特例2号は、各工事現場に監理技術者補佐を配置することで、監理技術者が複数の現場を兼務できる制度です。
専任特例1号が主任技術者・監理技術者を対象としているのに対し、専任特例2号は監理技術者のみが対象です。
また、従来の特例監理技術者制度を引き継いだ制度でもあります。
まとめ
令和6年の法改正により、主任技術者・監理技術者の専任義務は一定程度合理化されました。
ポイントをまとめると、
- 一定の要件を満たせば専任配置が必要な工事でも2現場まで兼務できる
- これを「専任特例1号」という
- 各工事の請負金額は1億円未満(建築一式工事は2億円未満)
- 現場間の移動時間はおおむね2時間以内
- 下請次数は3次まで
- ICT等による施工管理体制が必要
- 営業所技術者等との兼任制度とは別制度である
人手不足対策として注目されている制度ですが、すべての工事で利用できるわけではありません。
自社の工事が適用対象となるかを確認し、適切に活用することが大切です。

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